ジュリアン・グラック『ひとつの町のかたち』(永井敦子=訳、書肆心水、2004)2004 帯付、カバースレ・キズ・ヨゴレ少、背表紙上部ヨレ少/本体小口キズ・ヨゴレ(底/画像7,8枚目参照) 管理s4.5 ◆私はここにひとつの町の肖像を描こうとは思わない。私が試みようとしているのはただ――こうした回顧にはぎこちなさや誤り、フィクションかつきものだということを承知の上で――、その町がどうやって私をつくったのか、つまりどうやって町は、私が読書を通じてそれに目覚めていった想像の世界のことを、その世界と私のあいだに町が置いた変形をもたらすプリズムごしにのおくような点で促し、ある点で強いたのか、さらに幽閉生活のおかげで町の物質的な座標軸からはより自由に距離を置けた私が、どうやって私のなかの夢想が描き出す輪郭にあわせてその町をつくりかえ、客観的な法則よりもむしろ欲望の法則にしたがって、その町に肉と生命を与えたのかを示すこと。だからこの町には、どこにでも携えて行き、ぱらぱらめぐり、メモを書き加えたり、手荒に破くこともある、あのポケット・ガイドのように、私に連れ添ってもらいたい。いまだにいつも身近にあって、無意識に参照する台帳。◆ではこれからナントの街並みをたどりなおしてみよう。過去と出会って自己陶酔に浸り直すためではなく、私がそれらの街並みを介してなったものと、街並みが私を介してなったものに出会うために。 (裏表紙より)