自宅保管の品です。大変美品ですが、古いもので経年変化はございます。ご理解頂ける方にご検討をお願い申し上げます。 古書店で、公衆電話で、深夜のタクシーで――。 同時代人の息遣いを伝えるエピソードの連鎖が、極上の短篇小説を思わせるエッセイ15篇。 古書店で手にした一冊の本に書き込まれていた言葉。公衆電話で演じられた人生の一場。深夜にタクシー・ドライバーと交わした奇妙な会話。 ……エピソードの断片はさらなるエピソードを呼び寄せ、あたかもチェーン・スモークのように連鎖しながらひとつの世界を形づくる――。同時代人への濃やかな共感とともに都会の息遣いを伝え、極上の短編小説を思わせる味わいのエッセイ15篇。 【目次】 鳥でもなく魚でもなく 逆転、逆転、また逆転 老いすぎて タクシー・ドライバー 東京篇 君だけが知っている わたしに似た人 メランコリーの妙薬 走らない男 アフリカ大使館を探せ 赤や緑や青や黄や ナセルとマリリン 信じられない 消えた言葉 シナイの国からの亡命者 懐かしむには早すぎる あとがき 解説:高見浩 カット:小島武 レビューより 沢木耕太郎による1990年発表のエッセイ集。 前作同様に、複数のエピソードの間を魔法の絨毯で飛んでいるような、さり気なくも絶妙かつ緻密な構成は、山口瞳をして「エッセイを小説のように書く」と言わしめた沢木氏ならではのものと言えよう。また、街、雑踏、リングを包む歓声、カジノのざわめき、夜の路地に鳴る靴音。。。都会を彩る音が聞こえてきそうなところも、沢木氏のエッセイの特徴かもしれない。 どのエピソードもついつい引き込まれる内容だ。タクシードライバーの男の話、走らない男、シナイの国からの亡命者がよかった。シナイの国から・・・にあった「教養のためしてはならない百箇条」に書かれていたこんなコトバ自分は皆とは違う、という気持ちを忘れない、結局は自分も皆と同じだ、という判断を忘れない。自分とは違うものが、違うことが、あることを、忘れない。どんなときにも含羞を忘れない」沢木耕太郎のコトバではないが、これは沁みた。鳥類人間と魚類人間の話も。私は魚類人間だ・・・