1969 年 4 月 29 日、リチャード・ニクソン大統領はホワイトハウスでエリントンの 70 歳の誕生日を祝うパーティを主催した。 宴は、ハンク・ジョーンズがピアノを弾くホストバンドが中心となってエリントン・メドレーを演奏する形で進行する。 メンバーに白人が多いのは、 「ホワイト」ハウスでの宴であることを考慮したのだろうか。 もっとも、 ミンガス、マイルス このパーティは、まず第一にエリントンのために催された。出席者の顔触れからもそれは明らかだ。演奏するミュー また、この宴はエリントンの 「 Presidential Medal of Freedom 」の受賞式でもあった。「 大統領自由勲章」と訳される これは音楽的なイベントであると同時に、文化的・政治的なイベントであり、アメリカにとって 重要なイベントであった。なにしろ、この日のことだけで1冊の本が書かれているくらいなのだ。「どうせ企画モノでしょ?」と侮っていた自分が恥ずかし ン この賞は、 議会名誉黄金勲章と並んで文民に贈られる最高位の勲章で、トルーマンが制定し、 63 年にジョン・F・ケネディ が復活させた。日本でいう「紫綬褒章」のようなものと考えていいだろう。ジャズ・ポピュラー音楽の分野ではエリントンが 初めてで、それより以前はパブロ・カザルスなどのクラシックの音楽家だけだった、聞けばエリントンの受賞が 価値あるものに思えてくるが、最近では アルトゥーロ・サンドヴァルも受賞した( 2013 年)、と聞くと思わず脱力してしまう 。 と、これはサンドヴァルに失礼か。でも、いくら サンドヴァルが素晴らしいトランぺッターだとしても、エリントンと同等と いうことはないだろう (他には B.B. キング、スティーヴィー・ワンダーなども受賞している。ベイシーは死後の 85 年に受賞 。巻末に簡単なリストを付す)。 ジシャンこそエリントンよりも下の世代だが、エリントンと同年代か、それよりも上の世代の人々もきちんと招待されてい ることに注目したい。キャブ・キャロウェイ、ビリー・エクスタイン、ベニー・グッドマン、ディジー・ガレスピー。エリントンが 若いころにその曲を取り上げていたハロルド・アーレンに、『 Anatomy of a Murder 』(『或る殺人』)の監督 オットー・プレミンジャーなども参加している。残念ながらベイシーはヨーロッパツアー中だったため、伯爵の代理で出席 しているのは妻のキャサリン・ベイシー。そしてなんといっても、ウィリー・ザ・ライオン・スミス…! 旧友が一堂に会する のを見たエリントンは万感胸に迫る思いだったことだろう。 などは、いくらエリントンを敬愛していてもホワイトハウスでの演奏などやりたいとは思わなかったかもしれない。 曲によってゲストでピアニストが代わったり、ボーカルが入ったりと、総じて軽いラウンジ・パーティのような雰囲気の演奏が続く。 この CD はその時の演奏を収めたもので、 2002 年に Blue Note から発表された。 01. テイク・ジ・A・トレイ 02. アイ・ガット・イット・バッド 03. チェルシー・ブリッジ 04. サテン・ドール 05. ソフィスティケイテッド・レディ 06. ジャスト・スクイーズ・ミー 07. アイ・レット・ア・ソング・ゴー・アウト・オブ・マイ・ハート 08. ドゥ・ナッシン・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー 09. ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニモア 10. イン・ア・メロートーン 11. イン・ア・センチメンタル・ムード 12. プレリュード・トゥ・ア・キス 13. リング・デム・ベルズ 14. ドロップ・ミー・オフ・イン・ハーレム 15. オール・トゥー・スーン 16. スイングしなけりゃ意味ないね 17. 昔は良かったね 18. パーディド 19. ウォーム・ヴァレイ 20. キャラヴァン 21. ムード・インディゴ 22. プレリュード・トゥ・ア・キス 23. アイ・ディドント・ノウ・アバウト・ユー 24. プレイズ・ゴッド・アンド・ダンス 25. カム・サンデイ 26. ヘリテッジ 27. ジャンプ・フォー・ジョイ 28. パット